40人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が現実に戻って六年しか経ってなかったが、こっちの世界では百年経っていたなんて。
しかし、そうなら何故シエラが生きているのか。
ちらっとシエラを盗み見るも、パチリとウインクするだけで助言はしてもらえなかった。
なんと答えようか迷っていると、ロマーネは再び口を開く。
「答えてくれないならいいです。もとより、あなたが言っていることは冗談だとわかっていましたので」
「いや、違うんだ! これは」
「何が違うんですか!? 人が思い描いていた勇者という憧れを、その口で踏み潰したというのに!?」
俺が必死に否定の言葉を考えるも、うまく伝えることはできなかった。
結果、それは彼女の罵声に対して沈黙で答えるという結果になってしまい、その沈黙は彼女にとって『俺が勇者の知り合いであるというのは冗談』だと受け取られてしまった。
「……もういいです。私は他を当たりますので」
その言葉に何も言い返せず、そのまま彼女を返してしまうかと思われたその時、彼女を引き止めたのは意外にもシエラだった。
「ロマーネ、だったわね。あなた、本当に勇者のことを尊敬しているの?」
「当たり前じゃないですか!いくらおとぎ話といえど、あそこまで素晴らしい人を私は見たことがありません! 尊敬して何が悪いんですか!?」
最初のコメントを投稿しよう!