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鳩尾の部分にぽっかりと穴が開き、とめどなく血があふれているところを見れば、素人目に見ても明らかなほど蘇生は絶望的だった。
「へっ、なんて面してやがる……。お前はへらへら笑ってるほうが、お前らしいだろうが」
俺の両目からあふれる雫を抑えようともせず、俺は必死にシュヴィを助けようと方法を模索する。
「おいサク! 何とかならないか!?」
俺は振り返り意見を求めるが、彼は顔を悲痛に歪ませ、悲し気に首を振った。
「おい、お前も判ってんだろ。治療魔法でも、直せて骨折まで。この腹はもう、どうにもならねぇんだ」
「でも……、まだあきらめるのは早いかもしれないだろ……!?」
「無理だ。大体、アンタについていくって、決めた時から、こうなることは、覚悟してた。あんたが最期にそばにいてくれて、アタシは嬉しい」
「でも……ッ!」
大粒の涙がシュヴィのほほに筋を作る。
俺が口を開こうとしたところで、シュヴィに優しく口を押えられた。
「アンタが看取ってくれりゃ、それでいいんだ。ありがとう。そしてさよ、な……ら」
そこまで言って、だらんと、俺の口を押えていた手が落ちた。
「う、うわぁあああ!!」
魂の重さがなくなった肉体を抱きながら、数分前からたまっていたものが堰を切ったように喉からあふれ出す。
泣いても泣いても、涙は枯れることはなかった。
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