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あの後気が付けば、そこはもう見慣れた木製の天井が広がるいつもの宿ではなく、コンクリートでできた固そうな天井に蛍光灯が付いている部屋だった。
あの世界で鋼で出来た剣を振っていたはずの両腕は折れそうなほど細く、点滴が繋がれている。
どうやら俺は高校の図書室で倒れているところを救急搬送されたらしく、その日からずっと意識を失ったままだったそうだ。
あの世界で過ごしていた期間は三年を軽く越えるが、聞いた話によると俺が意識を失っていたのはわずか三ヶ月間だったそうだ。
最初はあの世界は全て俺の夢だったのかとも考えた。
しかし、目を覚ました時にこの左手に握っていたスカーフは確実にサーシャのものであった。
今でも俺は本当にあの世界で生活していたのかはわからないままだ。
しかし、あの世界で生活していた三年間が夢であったとしても、俺はあの世界での体験は無駄ではなかったと思う。
どれほど挫けそうな日が来ても、俺はサーシャや数々の仲間たちから受け取った思いを胸に努力し続けようと誓った。
……と、強く意気込んでいた俺も今じゃ遠い昔の話。
あのころとは違って面接の待合室でちょっとした回想をしている暇もない。
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