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二代前の国王で少しはハーピィに対する制限は緩和されたが、それでも差別意識は残ったままだった。
お婆様とお爺様はハーピィ共存派だったので結婚に反対はしなかったが、世間にハーピィと知られてはならないとお母様はいつもローブをまとって外出していた。
これほど生活に支障が出てしまう『ハーピィ族』という枷に私は徐々に憤りを感じていった。
そんな私はいつしか、いつもお母様から聞いていた昔話の主人公にあこがれを抱いていた。
その昔話は『モルゾードの英雄』。話の内容は、少しおかしな格好をした青年がハーピィを理不尽な運命から救うため、国王から出された試練を乗り越え、初めて出会ったハーピィの女性を救う、という物語だ。
そこに出てくる勇者の姿は実に美しく、まさに英雄と呼べる姿だった。
私はその話に出てくる英雄のようになりたいと一生懸命に武道を習い、勉学にいそしんだ。
しかしもうお母様からそんな話を聞くことはできなくなってしまう。
「最後に一度だけ、聞きたかったな……」
国家権力剥奪となれば国王と同居することすらかなわなくなってしまうだろう。
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