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そのくせ、クリニックのドアノブに手を掛けた途端、私の手は小さくカタカタと震え出した。
心がそわそわとして、何だか変。
かちゃり……
意を決してドアを開ける。
そこは、狭いながらも清潔な待合室。
受付には誰の姿もない。
開院の時間には、まだ1時間以上あった。
「おはようございます。あの……すみません」
そう声を掛けると、「あ、はーい。ちょっと待ってね」と、そんな声が返ってきた。
しばらく待つと『診察室1』と書かれたプレートの付いた扉が開いた。
そこからひょいと顔を覗かせたのは、まだ年若い男性。
30歳前後と言った所だろうか。
「やあ、おはよう。今日もちゃんと来たね」
その屈託のない笑顔を見た途端、私の心音がとくん! と大きく波打った。
一瞬で分かる。
私はこの人が好きなのだと……
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