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私達は遅い昼食を取った後、一番近場の海までドライブに出た。
車の中での先生はやっぱり優しくて、普段の私の様子を面白おかしく話してくれた。
夏も過ぎ、肌寒くなった秋の海は人気が少ない。
西の海に沈み掛けた夕日が、辺りを真っ赤に染め上げている。
「ねえ、先生。今までの私も、こうやって時々連れ出してくれたりしたんですか?」
「いいや。実は……今日が初めてなんだ」
「そうなんだ。じゃあ今日の私はラッキーですね」
「…………」
何故か、先生は返事をしてくれない。
沈黙が怖くて、私は何気ない話題を振りにかかる。
「それにしても凄い夕日……真っ赤で綺麗ですよね」
「綺麗……? そうかな。僕には、あの日の恐ろしい光景が重なって見えるよ」
「あの日……?」
見ると、先生の顔が真っ青になっている。
明らかに過呼吸を起こしていた。
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