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昔へ思いを馳せていたら、いつの間にやら目的のバス停に到着していたようだった。私はあわててバスを降り、重い買い物袋と共に見慣れたけやき並木を歩く。 負け惜しみのようだが、本気で目指せば私は夢を叶えられたのだと思う。でも、他のすべてを捨てるつもりでやらなければ、私は夢を叶えられなかった。そして私には、絵以外にも大切に思うものがあった。たぶんそれだけのことだったのだろう。 中学校のグラウンドから、金属バットの音が響く。私は、今日初めて聴いた歌のワンフレーズを口ずさむ。 「もしも夢だけ持っていたなら」 ランドセルの重さを感じさせない足取りで、子供たちが私の横を駆けていった。
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