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しかし彼は諦めなかった。彼はこの世界に自分の伴侶が存在していることを確信していた。
だが王弟という立場は厄介でもあった。
一定の年齢になると近隣の国々から縁談が持ち込まれる。それはいくらガイーナ王国の国力が近隣の国々より強くても阻むことのできない難題であった。王弟には『運命の人』がいるのだと外国に説いても意味がない。彼らは少しでもガイーナ王国に食い込みたいと願っているのだから。
その為10歳になる前に仮の婚約者を決められた。それがくだんの公爵令嬢である。
「殿下……」
「レンスロール嬢か」
あっという間に逃げて行った『運命の人』の背中を彼が目で追っていたら、いつの間に近くに来ていたのか、仮の婚約者であるキハイヤ・レンスロール公爵令嬢がすぐ後ろに来ていた。
「……強引なのは嫌われてしまいますわよ」
「それもそうだな。彼女に接触するのはまた明日にしよう」
楽しそうに言う彼に婚約者の表情は冴えない。しかし彼はそんな彼女を一顧だにしなかった。
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