第4章・砂漠の罠

4/24
前へ
/260ページ
次へ
「この先、そんなに離れていない場所に、小さいけれどオアシスを発見したよ。水質もいいから、飲料水にも使えそうだ。水を汲んでくるがてら、行水をしてくるといいよ。ケイティ様は、おいらが見てるから」 「ありがとう。せっかくだから、そうさせていただこうかしら」  散策お疲れ様と、ノアは帰って来た伽羅の頭を撫でると、彼は「ケケケ」と鳴き声を上げた。彼が喜んでいる時の声だ。  ノアは水筒とほとんど空になっている水瓶と、着替えをソリに乗せると、引っ張ってオアシスに出掛けた。  湧き水から飲料水を頂くと、服を脱いで、ノアは泉の中に座り込んだ。人一人が入ったら、隙間がない位の小さなオアシスだった。水位も浅い。水面に反射する光を纏った水中の、自分の白い肌を見下ろした。毎日歩き疲れているせいか、ケイティが傍にいるからか、ノアは彼と出会ってから、毎晩のように見ていた夢を全く見なくなっていた。  お告げもないなら、取り敢えず、今はひたすら前に進むしかないのであろう。今日も頑張って生きよう。ノアは冷たい水で顔を洗った。  天幕の立つ場所に戻ると、すでにケイティは目覚めていた。オアシスで行水をして来たことを告げると、素気ない返事をし、ノアを避けるようにして、外に出掛けてしまった。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

269人が本棚に入れています
本棚に追加