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首を傾げながら、朝ごはんの用意を始めると、伽羅が耳打ちして来た。
「目覚めた時にノアがいなかったことが、不機嫌な理由さ。おいらが、オアシスで水を汲んでくるように言ったんだって言ったら、頭をポカリと殴られたよ。全く、成人を迎えたくせに、たまに子供のように怒るんだから」
伽羅もプリプリと怒りながら、ノアにケイティの愚痴を零した。
バターを塗ったパンに、干し肉と一緒に焼いた目玉焼きにフルーツを添えた朝食を作り終えると、ノアはケイティを呼びに天幕を出た。ケイティは天幕を張った、近くの岩場の陰に座り込み、木の枝で砂地に模様を描きながら、いじけていた。
「ケイティ様、朝ごはんの準備が出来ましたよ。一緒に食べましょう」
ノアが明るく声を掛けても、ケイティは無視をした。やれやれ、伽羅さんの方がよっぽど大人だわと、ノアは呆れて、ケイティの目の前に座り込み、顔を上げた。
「ケイティ様が目覚めた時に、傍にいなかったことは、謝ります。でも、これから続く旅のために、オアシスに水を汲みに行っていたのです。それはケイティ様のためでもあるのですよ?」
「……それは、ご苦労だった。けれど、目が覚めた時にノアがいないのは、嫌なのだ。どこかへ消えてしまったのではないかと思うではないか」
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