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突然の出来事にノアは赤くなり、体を突き放して、首元を擦った。
「印を付けたのだ。俺のものだという印だ」
吸われた部分が熱を持っていた。不意打ちに鼓動が速くなる。
「ケイティ様は当たり前のことかもしれないですけれど、私にはこういったことに関する免疫は皆無なのです。からかわないで下さい。近くにいる女が全て自分のものだなんて、言い切って、行動にいちいち文句を付けるなんて、ケイティ様の遊女もさぞかし大変でしょうね!」
生意気と思いつつも、最後は嫌味で返してしまった。経験が乏しいことを鼻で笑われて、その場が終わると、ノアは思っていたが、ケイティは立ち上がると、ノアの肩を軽く叩き、耳元で呟いた。
「皆にこんなことをする訳ではない。お前は特別だ」
ケイティはそう言って、ノアを振り返らずに、さっさと天幕の中へ戻ってしまった。
「……特別って?」
ノアは首元を押えたまま、へなへなと地面に膝から崩れ落ちた。早くなった鼓動が治まらない。私は病気にでもなったのだろうか? 呪いの王子は、いつだって唐突に、ノアのペースを掻き乱すのだ。
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