269人が本棚に入れています
本棚に追加
朝食が終わると、一行は早々に出発した。伽羅の予定では、夕刻前にはシミ―ルカに着くらしい。荷物を乗せたソリを引き、伽羅を先導に、一行は一列に並んで砂漠を北へと進んだ。
太陽の位置からすると、午後の早い時間に差し掛かった頃、お昼休憩を終え、再び砂漠を歩き出すと、周りにごつごつとした赤茶色の岩場が増えて来た。所々に濃い緑色をした痩せた木々も見える。シミ―ルカが近づいて来た印だった。
突然、先陣を切って駆け出して行った伽羅が、ぴたりと足を止めた。耳を動かして、どこか遠くから聞える音を察知しているようだった。
「ケイティ様、聞こえますか?」
伽羅の言葉に、ケイティも、ターバンを取り、瞳を閉じて、獣の耳を澄ますことに集中する。
「……砂嵐か?」
ケイティは目を見開くと、そう答えた。
「はい、その内、前方からやって来るでしょう。しかも、かなり大きそうですよ」
伽羅が続けると、ケイティは辺りを見渡した。丁度、東の方角に、岩をくり抜いたような入り口の狭い洞窟を発見した。
「あの洞窟に一時、身を寄せよう。天幕の布で入口を塞げば、砂嵐も中に吹く込むこともなかろう」
「あいあいさ!」
最初のコメントを投稿しよう!