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五月蝿い蝉の鳴き声の合間に、ちりん、ちりん、と小さな音が響いている。
何もせずただ縁側にゴロリと横たわっているだけで、身体中の毛穴からだらだらと汗が滴り落ちてくる、夏の昼下がり。
町内のどこかにあるスピーカーが、市内に熱中症警報が出たということと、水分を取ることと、冷房を適切に使いましょう、という対処方法を、間延びした声で丁寧に教えてくれた。でもせっかく教えてくれても、どうしようもない。結構前にガスが止まり、電気が止まり、先ほどとうとう水も出なくなったことが判明した我が家では、出来ることが何もない。スマートフォンはもう、随分前から充電できていないし、そもそも料金の支払いもしていないから、電話をかけて誰かに助けを求めることも出来ない。まぁ、電源が入っていたって、唯一掛けられる相手には繋がらないのだけれど。きっと向こうも料金を払っていないか、端末自体をどこかに捨ててしまっていると思う。
とりあえず、家の中で一番風通しの良い場所で寝転がって、体力の消耗を抑えることを試みているものの、何もしなくても暑さでどんどん削られて行く。体の中の水分とか、体力とか、気力とか、その他諸々。
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