序章

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序章

「『傾国の華』そして幻の桃源郷。玄武天皇…素晴らしい夢を見せて貰った。最後 まで彼らに関わり、守れた事。そして桔梗の花を通して代々守れる事を誇りに思う。 先日の定期的手入れでテコ入れし直した。未来永劫、彼らを守る家宝として…」 「まぁ、お手入れ知らずで楽ちんですわね」  涙を堪え、夫の最期をかねてからの約束通り笑顔で看取る晴明の妻。 「満月と新月に月光浴させればな、大丈夫なのだ…。妻よ、お前に出会えて、 最高に幸せだった」 1005年冬。最愛の妻に看取られ、晴明は穏やかに息を引き取った。 「あなた…。私はもう少しだけ現世(うつしよ)でやるべき事に集中します。 その時が来たら、約束通りお迎えに来て下さいませね」  妻は、安らかに逝った夫の胸に頬を埋めた。長い銀色の髪が燭台の灯りに照らされ 繊細な輝きを放つ。それは小刻みに震え、間もなく小さな嗚咽が聞こえた…。 image=507815230.jpg
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