第1章

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僕は何年もの間、よく見ている夢がある。 知らない場所。 なのに、どこか懐かしい場所。 小さな女の子が現れる。 その子が言う。 『約束だよ』 この夢を見て目覚めた朝は、なぜか胸が締めつけらるような気持ちになる。 あの女の子は誰なんだろう? 小さい頃に会ったことのある女の子なのだろうか? 思い出せない。 僕には 10歳以前の記憶が無い。 事故にあった後遺症で記憶喪失になった。 らしい。 事故の事も、僕は覚えていない。 病院のベッドで目が覚めた時、側にいた両親が泣いていた。 僕は生死をさまよっていたらしく、病院の先生達は、意識が戻ったのは奇跡だと言っていた。 あれから9年になろうとしている。 何度も無くした記憶を思い出そうとしてみたけれど、その度に頭が痛くなるばかりで、何一つも思い出す事が出来なかった。 何か大切な事を僕は忘れている。 そんな気がして仕方がなかった。
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