甘辛な時間

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「このマンションの三階なの。 景色が良いわけじゃないけど、 夏は建物の隙間から花火が見えるの」 「ふーん。 毎年見ていたのか?」 「うん。 楽しみだったなあ。 宗次郎くんと離れた後は、 お母さんと良くお祭りに行って、 毎年楽しみだった。 大きくなっても、 ふたりでお祭りには行ったくらい」 「そうか……。 本当にここに戻ってきて平気なのか」 「うん。 売り払うことも簡単には出来ないし」 「どうして?」 「お父さんが買ったから。 昔話したでしょ? どこかの財閥がどうのって。 書類を集めるにもちょっとまだ気持ちの整理もつかないし」 「そうだったな」 「行こう! こんな話より、 お弁当食べなきゃ」  凜乃が手を引くと、 宗次郎がそっと腰に手を回す。
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