甘辛な時間

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 リードされるように歩くと、 そのままエントランスホールを抜けて、 エレベーターを昇った。  胸を鳴らせながら、 何も気の利いたことも言えずに部屋に到着すると、 凜乃は久しぶりの我が家に、 少し気後れしつつも鍵を開けた。  むわっとした空気で満ちていて、 思わず立ち尽くす。  すると、 宗次郎が靴を脱いで窓に向かって小走りに向かうと、 窓を開け放った。 「凜乃、 空気の入れ替えでもしよう」 「……うん」  ぼんやりと立ち尽くしたつもりはなかった。  ただ、 なんとなく思い出してくる思い出の多さと、 空気の重さに、 凜乃の体が動かないだけだった。
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