29(承前)

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 タツオは衝撃を受けていた。あの戦力差でもジョージは諦めずに、勝利を目指す作戦を考案したのだ。それがどんな手であるのか興味は尽きないが、それよりこの状況でも「勝ち切る」ことを前提に作戦を考えられるメンタルの強さに、タツオは心底驚いていた。  他のチームは皆時間稼ぎを目的に持久戦で、戦闘訓練に臨んだはずだ。それがジョージだけは勝てると踏んだのだ。もしかしたら、「須佐乃男」の正操縦者には、サイコよりも自分よりもジョージのほうが向いているのではないか。確かに時空間変容の適性については、生体時間を操作する秘伝をもつ東園寺や逆島のほうが上かもしれないが、ジョージには抜群の戦術眼と負けることをしらない戦いの意思があった。  兄の継雄がやってきた。狙撃銃を肩にかけ、砂まみれの姿は作戦部のエリートというよりも、前線の一将校にしか見えない。
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