桜の伝説

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「おっはよう!」 後ろから背中を元気よく叩かれる。が、痛くない。憎しみの一切ないこの挨拶法をしてくるやつを、俺は一人しか知らない。 「……よう」 振り返ってみれば案の定、小一からの幼なじみ、将吾(しょうご)だった。 「あっれれー?声が小さいねー。おっはよー!」 「……おはよう」 「テレビ番組かっ!ていう(むかい)の伝家の宝刀、ジャパニーズツッコミが来ない……!向、朝なにか変なものでも拾い食いした!?」 「朝はパン、イチゴジャム、コーヒーしか食べていない。どれも賞味期限内だ」 「……。相当落ちこんでるみたいだね。やっぱり、昨日の事まだ気にしてるのかい?」 らしくなく、中性的な顔だちを心配げにする将吾。その問いかけから逃げるように、俺は空に思いを馳せた。 ーーあれは、昨日のこと。
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