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勇者のあまりの大きな声と、親しい者が死んだことによる憤りが募っていき、つい大声をだしてしまった。
それに周りはびくつくも、誰も答えず沈黙を貫く。
すると勇者は、亡骸のほんの少し離れた所で、ガタガタと身を寄せ会いながら震えている、血濡れの女と男を見つけた。
そして彼らの前には、イングラと同様に首筋が噛みちぎられた遺体が転がっていた。
そう、彼も確か衛兵で、イングラの友人であった者だ。
確か、イングラの先輩に当たる人だったか…
そこまで他人事のように、まるでついこの間の天気を思い出すかの様に、ぼんやりと脳内に浮かべて、そして目を見開く。
勇「ぉ、まえ…らが…っ……お前らがイングラさん達を…!!」
「ひ、ひぃい!!」
「た、助けてくれっ!お、俺達にも、なに、なにがなんだか…!!」
怯えきってガタガタと不憫に思えるほど震えながら、失禁までしている2人に、勇者は剣を携えながらゆっくりと近づく。
辺りは3人が発する音以外は、恐ろしい程に静寂で誰もが息を詰めていた。
最早勇者を止めるものは誰も居ない。
怯えて泣きわめき、手足をばたつかせ、許しを乞い始めた2人の声も、勇者には聞こえなかった。
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