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ずるり…と傾く身体に反して、動かない剣は更にか細い姫の身体に刺さり、切り裂き、壊していく。
そうしていつしか魂が抜けた身体は力をなくし、勇者とは反対側の地面へと、糸が取れたあやつり人形の様にバタリと倒れて行った。
ベチャッ!
倒れた瞬間、耳障りの悪い濡れた雑巾を床に叩きつけたような音が静かな広間に響いた。
そして姫だったもののぽっかり空いた胸の穴からドロドロと深い闇のような液体が流れ流れ行き、勇者の目に焼き付けて行った。
勇「………ぇ……なん、で…?」
理解が出来ていない勇者は、その場に立ち尽くし、虚無を見つめていた。
そしてそんな、哀れで、醜く、人間の勇者の元に。
彼女は現れた。
【 可哀想な子……神に愛されていた筈なのに…魔に見初められてしまったのね…… 】
トン…と、光の中から女神のような美しい女が現れ、血溜まりを避けて勇者の元へと歩み寄る。
勇「……め、がみ…さま…どう、して……みんな死んで…」
今にも壊れそうな、限界の人間は目の前に現れた美しい女を神と思い、縋りつこうとする。
【 大丈夫よ…貴方は何も間違えてなんかいないわ……だって、私がここに呼んだのだから。私にはあなたが必要なのよ……だから、私と一緒になりましょう…?そうすれば、もう何も苦しくないか】
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