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勇者は、とうに限界を超えていた。
数々の事柄にショックを受け、信じていた人達による裏切りや喪失感…様々な感情が入り交じり、その心は黒く、どす黒く曇って行った。
そんな中現れた一筋の光。
その存在は大きく、必死でそれにしがみつこうと藻掻く。
本当に光なのかもどうか分からずに。
そして、そんなまやかしを消し去るかのように、背後からうっすらと現れ始めたのはーーー真の闇の王。
勇者がヨタヨタと女神の手を取ろうとした瞬間、闇が嗤った。
「クッ…クククッ……なんと滑稽な図だろうか…………蛆虫が腐ったものに縋り付く絵面はなんとも不快だな。」
勇「っ!?だ、誰だ……っ!?……お、まえ…?」
勇者は女神の手をとる瞬間それを止め、剣を構えながら女神を守るように振り返ると、目を見開き魔王を見つめる。
そして次第に剣を持つ手が震え始め、足を震わせ、瞳が恐怖に染まる。
「どうした?…子羊のように震えて……そんなに怖いのか?この俺が。」
勇「お、前は……だって…そんな、ありえない…」
何かブツブツと呟き狼狽える勇者。
魔王は更にニヤリと嗤う。
不敵に、見下すように、虫を見るかのように。
そして、1歩…1歩と勇者に向かって歩き始めた。
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