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*** 本を見ながら一時間かけて作ったハンバーグは、美味しいとはとても言えなかった。火加減が分からないまま放置していたら表面が黒く焦げてしまったし、玉ねぎは大きすぎる上に固く、おまけに塩加減も足りなかった。早々にギブアップした私とは違い、千晃は大量のケチャップをかけながらも全部を食べた。ご飯も2回、お代わりした。その間、私は色んなことを話し続けた。 会話というよりは、一方的に。 中国語の授業で、陳先生が教科書を無視して炒飯の作り方を説明していたら授業時間が終わった話、アルバイト先の居酒屋の店長が失恋して、たくわえていた髭をツルツルに剃ってしまった話、三人分の代返を頼まれて、声色を変えるのに必死だった話。 千晃は時折考え込むような表情を見せながら相槌を打った。相槌のタイミングは見当はずれだったけれど、私は気にせず話し続けた。 沈黙が怖かった。考える暇もなく、パッと浮かんだことを口から垂れ流した。今日を無事にやり過ごすことができれば、高校生の頃のような私たちが戻ってくるのではないかと、祈りにも似た期待を抱きながら。
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