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玄関から、カタンと物音がした。 いつの間にか雨音は止み、カーテン越しの光が、空がしらみ始めたことを知らせていた。さえずりと呼ぶにはけたたましい無数の鳥の鳴き声が、新しい一日の始まりを告げている。 いささかまどろんでいたらしい。ハッとして起き上がる。部屋の中を見渡したが、そこにはすでに千晃の姿はなかった。 ローテーブルに置いた彼の合鍵は無くなっていた。こんな場面、映画であればきっとエンドロールが流れている。千晃の名前と私の名前は並んでいるだろうか。そんなことを思うとあまりの馬鹿らしさにふっと笑みが漏れた。 「おはよう」 LINEを起動し、いつもの通りにメッセージを送る。私のスマホには、何の通知も届いていなかった。 トーク画面に表示された過去のやり取りを遡りながら、昨日の会話を思いだしていた。 「好きな人ができた」 「もう、その人には気持ちを伝えてるの?」 「まさか」 秒速で彼は笑った。 「ほとんど話したこともない。うまくいくかもわかんないよ」 千晃は私に嘘をついた。
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