既読、確認

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LINEの画面が既読になる瞬間を、眺めるのが好きだ。 1歩外に出ればそこかしこで虫が鳴いている片田舎のワンルームと、千晃がいる東京の西側にある学生マンションの一部屋とが、細い針と糸とで縫い合わされるように『繋がる』感覚。硬いスクリーンの向こう側には、確かに千晃が存在していて、今この瞬間は同じ画面を覗き込んでいるのだと思うと、使い捨てカイロみたいに熱を帯びたスマホの熱さすら愛しくてたまらなくなる。 5センチほど開けた窓からは、透き通った秋の空気が流れこんできていた。鈴虫の音色が空気を震わせて、燃え盛るような夏が終わったことを告げている。 窓の外を見上げると、つるんとした表面の月が、乾いた空気の中に浮かんでいた。 「月が綺麗ですね」と誰かに語りかけたくなるような夜の美しさは、太陽の光よりも心臓の奥深くまでを隅々まで照らして、孤独の輪郭をくっきりと浮かび上がらせていく。 切なさが虫の音に乗って、心臓がゆらゆらと揺れた。
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