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空気が抜けかけた自転車は、どうしてこうも不快なんだろう。
右足に力を込めるとガタガタとした振動がお尻から全身に回る。ひと漕ぎごとに、熱い空気が鼻先から抜けて行く。
大学から駅までの主要幹線道路は、ひたすら真っ直ぐで見通しがいい。左右にトウカエデが植えられた並木道は、どこまで漕いでも、同じような景色が流れていく。
生物部の学術棟を通り過ぎる。巨大な植物園が右側に見える。最寄り駅名である「大学都市駅」というのは誇張もいいところで、「都市」とは程遠い片田舎。けれど大学ありきで都市計画が成されたこの街は、どの道も直線的だからか、どことなく近未来的で、人工的な緑がまぶしい。大学と国立研究施設が連なった学園都市。
大学進学のために四月から住むことになった街はおよそ、そんな様相を呈している。
本当は、千晃もこの街に住むはずだったのだ。だから私もこの大学を目指した。けれどでかでかと張り出された掲示板に、千晃の受験番号はなかった。
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