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ただ、その少年の髪が金の巻毛で、それが小さく揺れて薄明りを反射し虹色に煌めいているのが分るだけだった。
粘液とくちびるの立てる響きと、唾液を飲み下す音。
そして切れ切れの呻き声が、そこに絡み合う。
ユージーンの人差し指が、トンとひとつコーネリアスの肩を叩いた。
「……出よう、コーネリアス」
くちびるの動きだけの、ほとんど無音の囁きでユージーンが言う。
友人の言葉に、コーネリアスは片眉を引き上げた。
「何を言う、ユージーン。せっかくだ、すこし見物していこうじゃないか」
「馬鹿な、悪趣味にも程がある……」
ユージーンが飲み込むように呟く。
いつだって平静さを揺るがせることのない友人の、そんなどこか気まり悪げな様子が、コーネリアスの気持ちをひどく浮き立たせた。
「いいから、しばらく見てろよ、ユージーン。その歳で『なにも知らない』訳じゃないだろう?」
ユージーンの耳もとで、コーネリアスが甘苦い皮肉の棘を纏わせて囁く。
「そんな朴念仁のクセして……君ときたら、『女の方』は、結構、盛んじゃないか、ユージーン」
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