80人が本棚に入れています
本棚に追加
3
あんな風に「終い」まで、のぞき見を続けるつもりなどなかったのだ。
なのに……。
といったように、ユージーンが、そんな「忸怩たる」気持ちに囚われていることを、コーネリアスは、ありありと感じ取っていた。
自身の目の前を足早に歩み進んでいく長身の友人が、表向きは常どおりの平静さを示しているにもかかわらず。
そしてそのことにこそ、コーネリアスの気持ちは子供じみて浮き立たっていた。
それこそ、さきほどまで眼前にあった際どく淫猥な光景などよりも、ずっと。
油断をすれば、クスクス笑いが口をついて洩れ出しそうなほどに――
コーネリアス・ウォーレンは、名門侯爵家の長子という、高貴な出自をあますところなく体現した少年だった。
翠玉の瞳。
金糸の髪。涼やかな鼻筋と、やや薄いが完璧な形のくちびるは、高慢すぎるほどに美しく。
あわせて、そこには「美しい」だけではない「魔力」もまた、滲み出ている。
ユージーンとは正反対に、コーネリアスは、社交に如才なく学園内でも幅広い付き合いを持つ人間ではあったが、そんな自らのふるまいが、ごく本心からのものではないことは、本人自身が痛いほどに知り尽くしていた。
最初のコメントを投稿しよう!