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“運命の出会い!?その1”
これで家に帰れる!と喜んだのも束の間、突然、雨が降り始め、雷も鳴り始めた。
ちゃんとした装備も持たないで山登りをしていた私とママは、ただキャーキャー悲鳴を上げながら山を降りるしかなかった。
「ママ!撮影なんかやめなよ!危ないでしょ!」
「何言ってんのよ!こんな時に運命の人と出会ったらドラマみたいじゃない!絶対撮らなきゃ!」
「たとえ出会ったとしても、こんな時に山登りしてるなんてバカだ!って言われるだけだよ!」
そりゃ誰とも会わないはずだ。
きっと天気予報で雨が降るとみんな知っていたのだ。
私とママに追い打ちをかけるように雷がゴロゴロゴロ!と鳴り響く。
私は頭を抱えて、その場にしゃがみこんだ。
「雷になんか打たれたくない!」
「大丈夫よ。あんたはアイドルなんだから、雷に打たれるはずはない!」
ママの根拠のない励ましに私は立ち上がった。
その時だった。
聞こえたのだ。
「あれは・・・」
「ちょっと、どこに行くの!危ないでしょ!」
山道横の茂みをかき分けて私が見つけたのは、ずぶ濡れになった子猫だった。
「ニャーニャー」
親とはぐれたのか、それとも山で迷ってしまったのか、一匹で心細そうに鳴いている。
「よしよし、もう大丈夫だからね」
私は優しく子猫を抱き上げた。
「子猫なんか拾って、まさか連れて帰る気?」
「当然でしょ!運命の出会いなんだから!」
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