修理店

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「お父さん、若いですね。この頃は写真に映っていても動画に映っているものはなかったから見れて良かった…」 少し涙ぐんでいるのだろうか、声が震えている。 言われてみれば確かにそうだ。 動画を撮影している人は映像には映らない。 内蔵メモリに映っているものが見たいということは女性の父が録画されているかもしれないということだったか。 「数秒ではありますが、ダビングしてデータをお渡ししましょうか?修理ではなく、作業サポート料金になりますが」 「ぜひお願いします」 ビデオカメラからダビングしたデータとビデオカメラ本体を女性に渡した。 大変な感謝をして店を出て行った女性を見て、修復できるものが物だけではないことに気づき、惰性ではあったが修理を仕事としてきたことに救いを感じた。これからまた、物ではない修理に出逢える機会があるだろうか?それまでこの仕事を続けていくことにしよう。
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