親子蕎麦

1/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

親子蕎麦

 時は江戸、町では神隠し、今で言うところの連続児童失踪事件が発生していました。一月程前から一人、また一人と毎日、子供が消えていき、その数はとうとう三十を超えます。その調べに当たっている、岡っ引きの与太郎と、その子分で下っ引きの熊五郎が江戸の町を歩いていますと、独楽で遊んでいる二人の子供と出くわしました。与太郎が子供達に声を掛けます。 「ねぇ、あんた達、いい独楽だね」 「なんだい、大人のくせに、おいら達と遊びたいのかい」 「遊びたいけど、今は仕事中だ。あんた達の友達で、神隠しにあった子はいないかい?」  与太郎の言葉を聞いた子供たちの顔色が曇ります。 「いるんだね。あたいは、居なくなった子供達を探しているんだ。知っていることがあったら、教えておくれ」 「三日前、おいら達と定ちゃんの三人は、いつものように独楽で遊んでたんだ。いい匂いがしたんで、何かなと思ったら、蕎麦屋が前を通ってた。定ちゃん、お腹が空いてたみたいで、ふらふらっと、その蕎麦屋について行っちゃった」 「それっきり、定ちゃんは帰ってこないんだね」     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!