0人が本棚に入れています
本棚に追加
「すごーい! 本当にメロンソーダだ!」
春香は目をキラキラさせて俺を見た。
「涼くんすごいね!」
なんでも知ってるね! とはしゃぐ彼女、春香は俺の愛しい恋人。
「ま、まあな」
クッ〇パッドで調べたことは内緒にしておこう。
「今日はクリームソーダにしようか」
そう言って俺は冷蔵庫からバニラアイスと小瓶を取り出した。
バニラアイスは俺の手作り。
なかなか手間がかかって大変だった。
次に戸棚からディッシャーを取り出す。
「ねえ涼くん、それ何?」
銀色のそれを不思議そうに眺める春香。
「これ? ディッシャーっていって、ポテトサラダとかアイスを丸くすくいとるやつだよ」
「なんでそんなのが部屋にあるの?」
普通の家ではあんまりみないよね? と春香は首を傾ける。
「......趣味。料理とか好きだから」
答える声はぶっきらぼうでそっけない。
最近は育メンとかオトメンとか増えてきてるけど、男が料理とか好きなのってちょっと恥ずかしいんだよな。
「......プッ」
「っおい、笑うなよ!」
恥ずかしいとは言ったものの、実際に笑われるとムッとしてしまう。
「どーせ俺には似合わないですよ」
そう言って俺はそっぽを向いた。
「いや、似合わないんじゃなくて、ふふっ、似合いすぎて、笑える、ふふふっ」
春香は笑いを噛み殺しながらそう言った。
なんだよ似合いすぎるって!
「いつも涼くん、好き嫌いするなーとか身体冷やすなーとか言ってくるじゃない?」
......まあな。
「それがお母さんみたいっていつも思ってたの。だから料理とか家事とか似合うなと思ったわけ」
お母さんみたいって......
恋人への思いやりを母性と一緒にされるのは複雑だよ......
「あはは、ごめんね。でも馬鹿にしたわけじゃないから」
それは分かってる。
春香は人一倍優しくて、人を馬鹿にするようなことは絶対しない。
俺はそんな春香に惚れたんだ。
「も、もう、誉めても何も出ないよ?」
春香の頬は赤く染まっている。
「そういえば、クリームソーダ作りかけだったね!」
そう言って春香は俺からディッシャーを奪い取り、アイスをすくい始めた。
最初のコメントを投稿しよう!