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乗り越えるべき柵とは反対の方向に…。
私の行動に驚いた2人と、私だけがこの世に魂と肉体を残す結果となった。
少なからず犠牲者を出した今回のイベントに、世間は様々なかたちでの関心を寄せた。
強く共感する人、
激しく非難する人、
興味本位に面白がる人、
哀れみの涙をこぼす人。
安堵の気持ちでいっぱいの私は、やはり不思議に思えてならなかった。
彼らは、何故そんなにつらかったのだろう…。
何がそんなに、彼らを苦しめていたのだろう…。
現場検証が片付いた後、私は彼らの思いが綴られた遺品を見せてもらった。
『思いが伝わらない! 誰も、本当の気持ちを分かってくれない!』
『自由になりたい! 自分で決めた人生を歩んでいきたい!』
…全く理解できない。
彼らには、思いを伝える「言葉」があるのに。
彼らには、自分で動かせる「手足」があるのに。
私には、生まれつきのハードルがある。それは、かなり高いハードルだと周りは言うが…。
例えば、私には言葉を発する方法がない。
例えば、私には自分で移動する手段がない。
だが、それは、生まれたばかりの赤ん坊が数年かけて獲得していくことを、私がその何倍もの時間や労力を費やして取り組んでいけば良いことだと思っている。
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