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あと数年でいわゆる成人を迎える私たちには、その言葉の意味することがすぐに理解できた。
「そうだね…、いいかもね…。」
誰とはなしにそんな言葉が口からこぼれて、意外と早く皆の気持ちは固まったようだった。
ただ一人、私を除いて…。
それからは、ほぼ毎日のように作戦会議が開かれ、みるみるうちに日時と手段が決まっていった。
私はというと、何一つ意見することなく、肯定もせず、否定もせず、ただただその輪の中心に置かれて過ごす毎日だった。
とうとう決行の日がやってきた。
私はいつものように皆に連れられて家を出た。だが、今日の行く先は教室ではない。
屋上。
皆、鞄の中から、それぞれの思いを綴った手紙や日記、あるいは写真等々の自分達の「生」を惜しんでもらうための品物を取り出す。
私には、そのようなものは何一つ用意できておらず、皆の同情を集めた。
トップバッターは、なんと私だという。
驚いたが、同時に納得はできた。
しかし何とか交渉した上で、私の順番は後回しにしてもらった。
彼らは順に、自分の使命を果たしていく。
ある者は、次の段階へのステップを踏むかのように潔く。
ある者は、全てをあきらめたように仕方なく。
遂に私の番が回ってきた。私は、宙に投げ出されたその体を見事にくねらせ、着地した。
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