第1章

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 夢ってどこで買えるのか。今はコンビニで何でも買える時代だけど、夢は売ってるのか。定価いくらだ。消費税はつくのか。賞味期限はあるのか。エロ本のようにモザイクはかかってないか。ツイッターでクレーマーがついてないか。色々妄想してしまう。  アマゾンでも売ってないもんかね。 「このまま、私、どうなっちゃうんだろ」  結婚すんのかな。できんのかな。しても、どうせつまらない男だけなんだろうな。男も私なんて相手しないよな。どうすりゃいいの。私、これまで何の目標もなくて、それを今頃になって後悔するなんて、もしかして、このまま一生フリーター。十年後も二十年後も、ちょっと貯金を使って千円もしないワイン買って高級感を気取る女でいるの? 「……はぁ」  憂鬱になると、余計に過去を漁る。  潮干狩りじゃあるまいし、貝どころか泥しかないのに、私は動画を調べていく。  で、ついには昔使っていたフリーメールアドレスを発見し、パスはフォルダにメモ帳で保存されてたので、アクセス。見ると、未だに迷惑メールが転送され、迷惑フォルダに入れられている。あとは、もうすっかり忘れてたアンケートモニターのメールやら、あ、何だこれ? 「え、私から?」  未来の私へ、という件名。  それには文面がなく、添付ファイルで動画が一つ。  開くと、中学生くらいの私が、照れくさそうにカメラを見て何かを語ろうとしていた。 『今の私は夢がありません。えーと、十年後はあるのかな。十年後の私は何をしてますか。いや、答えようがないだろうけどさ』 「何もしてないよ」  そうだ、思い出した。  昔、タイムカプセルならぬタイムメールといったものが流行っていたのだ。ま、流行ったといっても、効果が出るのは大分先だし、爆発的ヒットにはならなかったが、みんなバカみたいに十年後には使わないメールアドレスに友達で動画を撮影していたっけ。 『えーと、その……がんばれよ、未来の私。あーもう、うっさいな。何か恥ずいじゃん。自分自身に恥ずかしいのかって? 知らないよ、ともかく恥ずいものは恥ずいの」  友達に頼んで動画を撮影してた。  あー、チトちゃんが親から借りたビデオカメラで撮影してたんだっけ。そっちの方が画質キレイそうだし、と。  私は、顔が赤面してこっぱずかしくなった。  うわぁ、過去の私に、中学生の私に、はげまされてるよ。 「……くそぉ」  しかも、結構うれしいという。
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