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背が高くて色が浅黒くて。それってこの間練習試合で対戦した相手校のキャプテンみたいなタイプってこと。ということは。
つまり徹也とは真逆のタイプ。
「へ……へぇぇ、ハッスル姉ちゃんに彼氏が出来てるなんて知らなかった」
「だからハッスル姉ちゃんって呼ぶなって言ってるでしょ」
声の震えを覆い隠して、徹也は素っ頓狂な声をあげている。
「じゃあ、ちゃんと作らなきゃ、愛想つかされちゃうね」
「あんたはもう、口が減らない子ねえ」
「どんなやつにするの? やっぱ巨大なハート型?」
「そこまで恥ずかしい真似できるかっ!」
端から見てると初々しい姉弟にしか見えない。いや、むしろ姉妹か。
なんて事を思ってると、パタパタと軽い足音と一緒にキッチンの入り口から初音さんの弟である多岐が姿を現した。
「誰かと思ったらお前等か。テツ、そうやってるとまるで姉ちゃんの妹みたいだな。俺にも義理チョコでいいから作ってくれ。我が妹よ」
「誰が妹だ。誰が」
地雷と分かりつつ、こういったことを言えるってのもある種の才能なのかもしれない。
思った通り始まったキッチン内での喧騒は、いつもだったら必ず加わるはずなのに、何故かその時の俺は加わることが出来なくて、ひとり離れて壁にもたれていた。
何だろう。胸が痛い。
とてもとても痛い。ような気がする。
……なんで?
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