失恋は、甘いチョコの味

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――――――それから数日後の聖バレンタインデー当日。  朝、俺と徹也が登校中、多岐の家の前まで来たところで、待ってましたとばかりに初音さんが飛び出してきて、俺達二人に大きな包みを渡してくれた。  先日、手伝ってくれた御礼にということで、チョコをくれたのだ。  ただし、それは義理にしても冗談にしても巨大すぎるほど巨大な手作りチョコだった。しかもハート型。これをどうしろと?  俺が不満そうな顔を見せると、初音さんは「良い虫除けになるでしょ」と笑って言い放った。  おいおい。なんで俺に、俺達に虫除けが必要なんだ。  ってか、虫除けって? 「そりゃ、こんな巨大な手作りチョコ貰ったってことはもう売約済みと思われるってことだろ?」  すると多岐がニヤニヤと笑いながら言い放った。 「はぁぁぁ!?」 「その大きさじゃ、鞄の中には入らないし、持ったまま学校行くっきゃねえじゃんか。ってことは……」 「おいっ! ハッスル姉ちゃん! てめえ……」  俺がチョコを突っ返そうと顔をあげた頃には、初音さんはもう走り去って行ってしまっていた。  さすがハッスル姉ちゃん。素早い。 「……ったく。本命にはあんな凝ったやつ作ってたくせに。なんだよこれは。嫌味か。なあ……徹也」 「そだな」  俺の文句をあっさりと受け流して徹也はさっさと歩きだした。
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