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「おい、テツ?」
「……何?」
立ち止まって徹也が振り返る。
「あ、いや……なんでも」
「……変な奴。早く来いよ。行くぞ。遅刻したいのか?」
そう言って徹也は再び俺に背を向けて歩きだした。
あれ。まただ。
また、胸が痛い。
この間より更に胸が痛い。
本当に何なんだろう。この胸の痛みは。
俺は教室にはいり、授業が始まった後も治まらないこの痛みに辟易していた。
そして教室の斜め前、窓際の席に座っている徹也の姿に目を向け、誰にも気づかれないように小さなため息を吐く。
徹也の机の横のフックには、俺のと同じ今朝もらった初音さんのチョコが袋のままかかっていて、それは初音さんの思惑通り、周りからは本命のチョコだと勘違いされたようで、俺も徹也も不自然な程、クラスメートのみんなから羨ましがられてしまった物だ。
しかも、戸口まで来てその騒ぎを見ていた隣のクラスの女子が諦めたように肩を落として去っていったのを俺は見た。
あれは、俺と徹也と、どちらにくれるつもりだったんだろう。
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