失恋は、甘いチョコの味

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「やっぱ、そうだったのかなあ。どう思う? 澤村」  いつの間にこっそり机を寄せたのか、多岐が左肘で机の下から俺の脇腹を小突いてきた。  そんなことあるはずがないのに、さっきまでの空想を勘付かれでもしたのかと、俺は必要以上にギクリとなって多岐の方に顔を向ける。 「……そうって……何が?」 「テツの事だよ。あいつ、姉ちゃんに気があったのかなあ……」 「……!?」  思わずガタンと音をたてて俺は椅子から立ち上がった。 「何だよ! それ!?」 「どうした、澤村。先生の説明に不満があるなら言ってみろ」 「……バカ」  見おろすと多岐が頭を抱えていた。徹也も何事かと俺の方を振り返っている。 「……何でもありません。ちょっとした勘違いです。気にせず授業進めてください。先生様」  教室中の視線を集め、俺はすごすごと椅子に座り直した。  本当に、何やってるんだろう。俺は。顔から火が出そうだ。  ふと見ると、徹也はもう視線を黒板の方へと向けていた。  大きな瞳。男にしては長めの睫毛。黙って立ってれば女の子みたいに可愛らしい顔。  窓際の徹也の席には日の光がよく入る。  頬杖をついた手にも、丸みを帯びた頬にも、相変わらずクルクルと巻いている柔らかそうな癖毛にも、まんべんなく太陽の光が粉のように降り注いでいる。
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