失恋は、甘いチョコの味

18/20
前へ
/20ページ
次へ
「どうした? なんかいた?」 「……いや、あそこ」  俺が指差した先に初音さんがいた。思った通り徹也の表情が凍り付く。  初音さんは彼氏と一緒に歩いていた。背が高くて浅黒い肌で眉の太い精悍な顔つきをしている。当たり前のことだが、何処をどう見ても女の子には間違われない類の顔だ。 「ああいう人が好みだったんだな。ハッスル姉ちゃん」 「……そ、そうかな」  俺は曖昧に頷く。もうどうしていいか分からない。  俺は必死で徹也から目を反らした。  俺は怖い。今、徹也がどんな表情をしているのか見るのが怖い。  そしてまた胸が痛くなる。  ズキンズキンと痛くなる。  これは何だろう。何の痛みなんだろう。  もしかして、これが失恋の痛み。これが失恋の痛みなんだろうか。  え?  失恋って、誰の? 誰が誰に対しての失恋なんだ?  徹也の?  それとも俺の?
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加