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「…………」
ちょっと待て。
俺はおもわず自分の思考にストップをかけた。
なんで俺の失恋なんだよ。おかしいじゃないか。
だってそもそも、俺は別に初音さんのことなんか何とも思ってない。あの人は多岐のお姉さんで、俺にとっても純粋に姉さんみたいなもので。それ以外のなにものでもない。
なのに。
なんで俺の胸は痛んでるんだ。
なんで俺はこの痛みを失恋と結び付けてるんだ。
「…………」
俺はチラリと隣に立つ徹也を見た。
徹也は俺の視線にも気付かず、じっと仲良く並んで歩いている初音さんと彼氏の姿を見ている。
一瞬、俺には徹也が泣いてるように見えた。もちろん実際に涙なんか浮いてはいないんだけど。それでも。
それでも俺には徹也が泣いているように見えたんだ。
そして、それを見ていると俺の胸が痛みだす。
ズキンズキンと失恋の痛みに痛みだす。
ああ、なんだ。
そういうことか。
やっと分かった。
俺も失恋したんだ。
たった今、俺も失恋したんだ。
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