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「……ったく。なにが可愛いカップルだ。何処をどう見たら、あんな言葉が出てくるんだよ」
どうやら映画上映中の二時間程度の時間では、徹也の怒りは治まらなかったらしく、徹也は帰り道の最中もまだ俺の隣でブツブツ文句を言い続けていた。
「だいたい普通しゃべったらさすがに気付くだろ。男か女かなんて」
「……いや、逆に声聞いたから確信持たれたんじゃないのか?」
「…………」
俺の無意識の突っ込みにピタッと徹也の足が止まった。
ヤベ。俺、また地雷踏んじまった。
「……それ、どういう意味だ? 陸」
「いや……だから……」
俺達は今、中学三年だ。しかも季節は冬。二月である。
当然のごとく俺を含め、ほとんどの男子生徒は声変わりをしているというのに、何故か徹也はまだ甲高いボーイソプラノを維持し続けているのだ。
まあ、こいつの顔から野太い声が出てくるなんて想像出来ないので、イメージに合ってると言えば合ってるんだろうけど、本人としては堪らないんだろうなぁ。
などと思ったとしても、やっぱりその事実は俺にとっては他人事で。
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