証拠写真

「アンタ浮気してるでしょ！　証拠ならあるのよ！　ほら、これ！　この写真の女誰よ？！」
　けたたましい叫びと共に、彼女に突きつけられた一枚の写真。
　服装と顔つきからして会社の帰りかな。そこそこ混雑した駅の構内に俺がいて、その隣には寄り添うように女が立っている。
　なるほど。この写真だけ見たら浮気を疑われても仕方がない状況だ。でも神に誓って言う。俺はこんな女は知らない。というか、写真の日づけの日にこんな人混みにいた覚えがない。
　ここ半月ばかり残業続きで、帰宅は終電に滑り込む形になっている。
　最寄り駅は田舎だから、終電がつくような時間に人でごった返すことはないんだ。
　というか、よく見ると隣の女も周りの人も、若干どこか透けてる部分があるんだが、頭に血が上ってる彼女はそれに気づいてないらしい。
　いったい彼女は、誰に頼んでこの写真を撮ったのか。
　自分でならその場で声をかけてくるだろうから、誰か第三者に頼んだことは間違いないだろう。
　それが友達か興信所の人なのかは知らないけれど、とりあえずその人に、この日の駅は写真通りに人が溢れていたのかどうか聞きたいよ。そして、もし今も俺の帰宅時間に人でごった返していると判明したら、俺は速やかにこの駅を利用しない場所へ引っ越ししようと思う。

証拠写真…完