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そんなある日、いつものように誰もいない空間へ本名を名乗ってから、
公園でのストリートライブを開始すると、
ガラの悪い若者数人に囲まれ、殴る蹴るの暴行を受けた。
ギターだけはと全力で庇い、うずくまって、暴行が止むのをひたすら待った。
結果、ギターは守りきったが、重傷を負い、左手が思うように動かなくなった。
次にここで歌ったら、今度は殺すと言われた。もう公園には行けなくなった。
それでも再び歌う日を目指し、懸命にリハビリを続けた。
数ヶ月に及ぶ努力で、左手の機能は回復し、元通りの演奏ができるまでになった。
創が背水の陣で挑戦を決意したのは、あるライブハウスのオーディション企画で、
誰でも有名な音楽プロデューサーの前で演奏し、講評を頂けるというイベントだった。
万感の思いを込めて、ステージ上で全力で歌い切った。
自身のポテンシャルを最大限発揮した、自分史上最高のライブだった。
その直後に音楽プロデューサーから投げ掛けられた酷評は、
詳しい内容は覚えていないが、
「まるで才能が感じられない」という一言だけが、耳にこびり付いた。
今までの努力も、音楽への想いも、全てが崩れ落ちる感覚がした。
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