カイの尾行

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ヒルフィが消息を絶ってから6日目の朝。 一向に消息の手かがりが掴めないままの状況に、兄のレイの静かな苛立ちが目立ち始めているのにカイは気が付いていた。 「おはよう、ドリュー。」 カイが城の片隅にひっそりとある薬草園で、薬草の手入れをしてた宮廷医師のドリューへと声をかける。 マリアゴルド国に比べて肥えた土地が少なく緑に乏しいマリアテレザ国だが、城内には研究も兼ねて草木を栽培するための特別な場所が設けられていて、薬草園もそんな一つだった。 「おはようございます、カイ様。」 生え過ぎた葉の剪定をハサミで丁寧に行いながら、ドリューがカイへと顔を上げて返事をする。 ドリューはカイがかつて砂漠で大怪我を負った際にずっと付きっ切りで看病をしていた見習い医師で、今では宮廷医師へと昇格し、カイが心を許せる数少ない人物の一人であった。 銀色の長いウェーブのかかった髪が朝日に反射して煌めいて見えた。
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