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大声で怒鳴られ、ヒンニィはバツの悪そうな顔をし小さく両手を振って、降参の意思を告げる。
「ごめんなさい!もう、勝手にお城を抜け出したりしないから。」
しかし、ヒンニィのそんな行動をよそに、履いているショートブーツの踵をカツカツと鳴らしながら大声の主はヒンニィへと近付いて来る。
「ごめんではありません!まったく、どれだけ心配した事か…。」
声の主は、ヒンニィの前に立つと安心したかのように肩を撫で下ろした。
「ごめんね、ナリア。」
このナリアと呼ばれた人物はヒンニィが産まれた時からずっと一緒に過ごしてきたヒンニィ直属の侍女だ。
ヒンニィとはちょうど10歳、歳が離れているが、時には母のように、時には姉のように、時には親友のように思える、心を許せる数少ない人間のひとりだった。
琥珀色の長く美しい髪にマリンブルーの瞳、細く引き締まったウエストには似つかわしくない豊満な胸と、女性の美しいところを詰め込んだような外見とは裏腹に、時々今のように大声を荒げる時があった。
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