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「私、あの人苦手なんだよなぁ…。」
ヒンニィが浮かない表情のまま、ずっと地面を見つめている。
ヒンニィが「あの人」と言ったのはこのままだと嫁ぐ事になるマリアテレザ国第一王子のレイの事だった。
レイは兄のヒルフィと同い年で病気にかかっている現国王の代わりに国政を執り仕切っている切れ者だが、どこか冷酷な雰囲気が漂い、ヒンニィは数回しか会った事がなかったがあまりいい印象を持ってはいなかった。
「…明日、お城に来るんでしょう、レイ様。」
ヒンニィが深くため息をつくのに、つられてナリアも困った様な表情を向ける。
「はい。明日ヒルフィ様の転落事故の詳細を確認しにいらっしゃるそうです。」
ナリアの口から伝えられる事実にヒンニィは再びため息をつく。
「ヒンニィ様のお気持ちもわかりますわ。王女として産まれいくら国の為とはいえ、好きでもないお相手に嫁ぐなどと、同じ女として許せません。」
ナリアがヒンニィを後ろからぎゅっと抱きしめた。
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