163人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、行ってくるわね。」
ヒンニィはそう言うとレオヤを崖の上に残し、つり橋の脇から 崖を降り始めた。
切り立った岩面のところどころに出ている出っ張りや木の根っこを探し、足場を確保しながら崖を降っていく。
「お兄様、どうか無事でいて欲しい…!」
ヒンニィは誰に聞かれるでもなく独り言を呟き、時々下から吹き上げてくる強い風に飛ばされない様に気を付けながら、辺りを見回して手がかりがないか確かめる。
通常、普通の16歳の女の子であればこの様な崖を下る事など出来ないのだが、ヒンニィとヒルフィには王族にしか現れないとある特別な能力が産まれながらに備わっており、その能力に耐えうるように小さい頃から特殊な訓練を受けてきたので身体能力が高く、この様に崖を下る事など容易に出来るのだった。
それに加えて、文武両道の兄がそう簡単に何の手がかりも残さず行方不明になるわけがないという疑念と真相を探りたいというヒンニィの強い責任感がこの行動へと駆り立てていた。
最初のコメントを投稿しよう!