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ギイッと蝶番が軋む音がして、厚いドアがアルストレイルの手によって開かれる。
ヒンニィはゆっくりと歩を進め、来賓室の中へ入るとすぐに目の前を確認する前に深々をお辞儀をした。
「遠路はるばるマリアゴルド国へようこそおいで下さいました。」
挨拶を言い終えた後も、ずっと視線を上げないでえんじ色の毛足の長めのカーペットを見つめていた。
毛足が長いカーペットのせいで足音は聞こえないが、ベルトか何か装飾品の金属がぶつかる音がして、こちらに誰かが近付いて来るのがわかる。
金属音が止まり、ヒンニィにその金属音を立てていた人物の影が重なる。
「予定より早い到着でしたのに、ヒンニィ王女自ら出迎えて頂き、ありがとうございます。」
その人物の声が嫌悪感の塊であるレイのものではない事に気が付いて、ヒンニィは驚きながらゆっくりと顔をカーペットから引き上げる。
顔を上げた瞬間、ヒンニィは更に驚いて目を丸くして瞬きを繰り返す。
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