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なんと、今ヒンニィの目の前にいるのは、昨日龍口の谷でヒンニィを助けてくれた青年だった。
豪華な装飾品に彩られたハイカラーのジャケットを纏い、昨日とだいぶ印象が異なるがその吸い込まれそうなダークブラウンの瞳は間違いなくあの青年のものだった。
驚き過ぎて声も出せないでいるヒンニィに青年は微笑みかけると、跪いてヒンニィの右手をスッと取った。
「初めまして。私はマリアテレザ国の第二王子のカイと申します。兄のレイが昨夜から急な発熱に見舞われてしまい訪問が困難になってしまい、本日は急遽代わりを務めさせて頂きます。」
そう言いながら、カイは上目遣いにヒンニィの様子を伺う。
「カ…イさま…?」
未だに状況が掴めていないヒンニィは、頭の中を必死で整理しようとする。
マリアテレザ国には王子が2人いるとは聞いてはいたがなぜか兄のレイにしか会った事がなく、弟のカイの姿を見るのはこれが初めてだった。
カイは瞬きを繰り返すヒンニィに御構い無しに、手に取ったヒンニィの右手の甲にそっと挨拶の口づけをした。
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